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[要望声明] 初等中等教育におけるSTEAM教育の導入とテクノロジー教育の拡充・刷新について

一般社団法人 日本産業技術教育学会理事会 代表理事(会長) 山本利一

 一般社団法人日本産業技術教育学会理事会は,初等中等教育におけるSTEAM教育の導入とテクノロジー教育の拡充・刷新について以下のように表明いたします。
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2024年5月28日

一般社団法人 日本産業技術教育学会理事会
  代表理事(会長) 山本 利一        

[要望声明] 初等中等教育におけるSTEAM教育の導入とテクノロジー教育の拡充・刷新について

  •  中学校技術・家庭科技術分野を再編し,情報活用能力を基盤に,ものづくりの技術と情報通信技術とを融合した学習内容を取り扱う新教科「テクノロジー科」(仮称)に刷新。
  •  小学校プログラミング教育を独自の教科・領域とし,各学年週1時間程度を配当。
  •  高等学校情報科において情報Ⅰの単位数を増加するとともに,情報Ⅱを必修化。
  •  最先端技術を活用した学びを実現するために,全ての学校にSTEAMラボを整備。
  •  小学校,中学校,高等学校の「総合的な学習(探究)の時間」に,テクノロジー教育を柱としたSTEAM教育を導入・展開。

 予測不能とまで言われるほど変化の激しい現在の社会においては,AIやIoTなどの技術革新が急速に進展しています。このような中,政府は,最先端のテクノロジーを活用して,持続的に発展可能な社会の構築と社会課題の解決との両立を目指す新しい社会像として,Society 5.0を提唱しています。Society 5.0は,これまであった狩猟社会(Society 1.0),農耕社会(Society 2.0),工業社会(Society 3.0)を支えるものづくりの技術と,情報社会(Society 4.0)を支える情報通信技術(ICT)とが高度に融合したシステムによって実現されるものです。

 これからの児童生徒が,Society 5.0を実現し,その中で自らの人生を逞しく切り拓くとともに,新しい社会づくりを進めていくためには,学校教育の改革が不可欠です。その一環として,GIGAスクール構想で導入された一人1台端末の活用の推進が図られています。その上で今後は,学校教育における教育DX(デジタルトランスフォーメーション),小学校・中学校・高等学校における一貫したデジタル教育の推進が求められます。

 このような中,文部科学省においては,デジタル人材育成,情報活用能力育成の文脈で,小学校・中学校・高等学校でのリテラシーレベルの教育として,STEAM教育(Science, Technology, Engineering, Arts, Mathematics)など問題発⾒・課題解決的な学びの充実に向けた検討が始まっています。また,経済産業省は,「知る学び」と「創る学び」が往還する「学びのSTEAM化」を提唱しています。STEAM教育は,教科横断・文理融合・価値創造を趣旨とし,児童生徒が多様な学びを総合し,実社会の問題について深く探究した上で,デザイン思考1)を働かせてその解決策を創造的に提案する学びです。STEAM教育は,解決策を提案する過程において,文化・芸術的なアプローチに加えて,テクノロジーによって新たなプロダクト2)のプロトタイプを創り出す活動が含まれています。プロトタイプを創り出す活動は,エンジニアリングの見方・考え方3)を働かせて,新たな価値を具体化するSTEAM教育における重要な活動です。STEAM教育は,近年発達が著しい情報通信技術とそれを基盤としたものづくりの技術の融合を図ることによって構築されるSociety5.0の実現に向けた教育として重要な役割を果たします。
 今後,日本の小学校・中学校・高等学校においては,Society5.0の実現に向けた「新しい価値を創造する力」を育成するために,各教科での学びと「総合的な学習(探究)の時間」が往還する体系的なSTEAM教育の展開が求められます。また,テクノロジーの学びに係る教科・領域を体系化し,国際競争力を高められるデジタル人材の育成を一層,充実させる必要があります。

1) 人々の願いをかなえるための創造的な問題解決において働かせる思考
2) 製品,システム,サービス,プログラムなどの人為的成果物
3) テクノロジーを用いて最適な人工物を探究/創造する際に働かせる工学的な見方・考え方

 このことについて本学会は,STEAM教育に果たすテクノロジーに関する教育課程の在り方について検討を進め,2021年11月に報告「次世代の学びを創造する新しい技術教育の枠組み」を刊行致しました。同報告では,小学校,中学校,高等学校を貫くテクノロジーに関する教育の在り方と,それによって実現されるSTEAM教育の姿を示しています。なお,ここでいうテクノロジーとは,現実空間を支える物質・エネルギー・生体等に関わるテクノロジーと,仮想空間を支える情報通信やAI等に関わるテクノロジー,並びに両者が高度に融合したIoT,ロボティクスなどの新たなテクノロジーを総合的に捉えています。

 現行の学習指導要領が2017年(平成29年)に告示された後,次期学習指導要領の改訂に向けた議論が開始されようとしています。次世代を担う児童生徒が,最先端のテクノロジーを学ぶことで,創造的に社会課題の解決に挑戦し,持続的に発展可能な社会を構築し,その中で一人一人が逞しくいきいきとした人生が送れるよう,本学会同報告に基づいて,次期学習指導要領にSTEAM教育を導入すること,その中核を担うテクノロジーに関する教育課程の体系的な拡充と刷新を強く求めます。

 具体的には,以下の3点を求めます。

要望1.小学校,中学校,高等学校におけるSTEAM教育の導入
 次期学習指導要領において小学校,中学校の「総合的な学習の時間」,高等学校の「総合的な探究の時間」にSTEAM教育の導入を求めます。具体的には,児童生徒が多様な学びを総合し,実社会の問題について深く探究した上で,デザイン思考を働かせて,その解決策を創造的に具体化する学びを保証することを求めます。また,このための学習環境として,小学校,中学校,高等学校にSTEAMラボを整備することを求めます。
<STEAMラボとは>
 STEAM教育を推進するためのデジタルものづくり機材(例えば,3Dプリンタやプログラミングロボット教材など),多様な形態でのプロジェクトを可能とする活動スペース,コミュニケーションスペースなどを含む多機能・総合型の学習環境を有する教室
  •  STEAMラボは,STEAM教育のみならず,各教科・領域等における最先端のテクノロジーを活用した新しい学びの実現にも資するものとなることが期待されます。
  •  STEAMラボの整備に向けて,現在,理科,算数・数学科の設備整備に適用対象が限定されている理科教育振興法を,小学校,中学校,高等学校のテクノロジー教育にも適用範囲を拡大した理工系教育振興法(日本版STEM教育法)に改訂することを求めます。

要望2.小学校,中学校,高等学校におけるテクノロジーに関する教育の充実
 STEAM教育の推進に向けて,テクノロジーの学びを以下のように充実させることを求めます。
〇小学校
 小学校においては,現在のプログラミング教育を拡充することを求めます。そのために,現行では教科横断的な扱いとなっているプログラミング教育を,教育課程内に独自の教科又は領域として位置付け,週1時間程度の授業時数を確保することを求めます。その上で,探究/創造的なプログラミングの学習など,エンジニアリングの見方・考え方を働かせる問題発見・解決活動を充実させることを求めます。
〇中学校
 中学校においては,エンジニアリングの見方・考え方を育むために,情報活用能力を基盤に,ものづくりの技術と融合した情報通信技術に係る教育課程の刷新を求めます。そのために,中学校技術・家庭科技術分野の再編による新教科「テクノロジー科」(仮称)の設置を求めます。新教科「テクノロジー科」(仮称)の具体については下記の要望3に示します。
〇高等学校
 高等学校では,現在の共通教科情報科の拡充を求めます。そのために,情報Ⅰの単位数の増加と情報Ⅱの必修化を求めます。その上で,現行のプログラミングや情報システム開発の学習など,エンジニアリングの見方・考え方を働かせる問題発見・解決活動をさらに充実させることを求めます。

要望3.中学校における新教科「テクノロジー科」(仮称)の設置
 中学校技術・家庭科技術分野を再編し,新教科「テクノロジー科」(仮称)に転換・拡充することを求めます。新教科「テクノロジー科」(仮称)では,Society 5.0における技術観に基づいて,情報活用能力を基盤に,情報通信技術とそれを基盤としたものづくりの技術との融合を図る学習内容を構成します。新教科「テクノロジー科」(仮称)に,各学年70時間(計210時間)を配当し,最先端のテクノロジーに対する理解とエンジニアリングの見方・考え方を働かせる問題発見・解決力を育成する教科へと刷新することを求めます。

<新教科「テクノロジー科」(仮称)の学習内容の例>
 コンピュータサイエンス,情報通信ネットワーク,プログラミング,情報コンテンツ,AIの活用と実装,IoTの構築と活用,材料・素材と加工の技術,デジタルものづくり,建築・建設・インフラの技術,シミュレーション,生物育成とアグリテック,データ活用,電気電子・半導体,センシング,機械・ロボティックス,プロジェクト・マネージメント,アントレプレナー教育など。
  •  生徒は,これら最先端のテクノロジーについて,中学生の発達段階に即してその原理・法則,仕組み,生活や社会・環境・経済との関わりを学ぶと共に,エンジニアリングの見方・考え方を働かせ,新しい価値の創造に挑戦するプロジェクトに取り組みます。
  •  プロジェクトでは,生徒の発達段階に即し,身近な生活や社会の問題に加えて,環境,エネルギー,福祉・介護・医療,宇宙開発,海洋開発,食料生産など,SDGsに関わる複合的な社会課題に取り組みます。
  •  広く開かれた最先端のテクノロジーの学びは,あらゆる産業におけるデジタル人材の普及・推進に加え,新たに産業を興す起爆剤としての起業家(アントレプレナーシップ)教育にも大きく貢献します。
  •  これはまた,理工系の進路やキャリアへの関心を高め,科学技術関係人材の育成に繋がっていくことが期待されます。
  •  理工系の進路やキャリアに進まない生徒にとっては,テクノロジーに関わる基礎的な素養を身に付けることで豊かな人生を実現するとともに,社会全体として科学技術の進展をサポートできる「テクノロジーに明るい市民」として,Society5.0の実現に貢献していきます。


以上

【参考資料】
内閣府 科学技術政策Society5.0
https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/

内閣府 Society 5.0の実現に向けた教育・人材育成に関する政策パッケージ
https://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/kyouikujinzai/saishu_print.pdf

文部科学省 STEAM教育等の各教科等横断的な学習の推進
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/mext_01592.html

文部科学省 中学校学習指導要領(平成29年告示)解説技術家庭編
https://www.mext.go.jp/content/20230516-mxt_kyoikujinzai02-000033059_04.pdf

一般社団法人 日本産業技術教育学会
「次世代の学びを創造する新しい技術教育の枠組み」
https://www.jste.jp/main/data/New_Fw2021.pdf

一般社団法人 日本産業技術教育学会
「次世代の学びを創造する新しい技術リテラシー教育」(パンフレット)
https://www.jste.jp/main/teigen/tech_literacy_2022.pdf

一般社団法人 日本産業技術教育学会
「技術教育推進パンフレット」
https://www.jste.jp/main/teigen/231011_leaflet.pdf


公開日:2024年5月28日
   

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